マション
リヨンのおいしいもの

リヨンならではの伝統的な朝ごはん文化「マション」を体験

フランスの朝ごはん

マション(mâchon)とは、一言で説明するならリヨン独特の伝統的な朝ごはんです。しかし、朝ごはんと言っても、普段フランス人が食べているものとは全く違います。本題に入る前に、まずはフランスの一般的な朝ごはんについて簡単にお話ししましょう。

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フランス人は朝何を食べているの?

フランス人の典型的な朝ごはんといえば、焼き立てのクロワッサンとカフェオレなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。でも実際は家の朝食のテーブルにクロワッサンが並ぶのは少数派のようです。家庭により、また人によって様々ですが、共通点は甘いものを食べることです。日本の伝統的な朝ごはんのように塩味のものを食べることはほぼありません。

ちなみに、我が家は各自好きなものを食べます。夫はホットチョコレートとPetits pains grillés(プチ・パン・グリエ)というプレーンビスコッティに似たようなものを、継息子はホットミルクとサンドウィッチ用のパンにコンフィチュールを分厚く塗ったもの、そして私は生搾りオレンジジュースとバゲットにフルーツを。気分次第でバゲットにバターやコンフィチュールを塗って食べることもあります。ちなみにフランス国内の旅先などでカフェで朝食を摂るときには、いつもクロワッサンと暖かい飲み物を注文します。

ブランチ

数年前からリヨンでも増えてきているのが、週末のブランチです。家でブランチをする人がどのくらいいるのかは知りませんが、週末の午前中におしゃれなカフェの前を通りかかると、ブランチを楽しむ人で賑わっているのを見かけることがあります。このブランチとマションを比較する人もいるようですが、全く別物。唯一の共通点は、ボリュームたっぷりだということです。ちなみに、マションの方がブランチよりも少し歴史が長く、ブランチという概念が19世紀終盤のイギリス発祥なのに対し、リヨンのマションは19世紀前半に生まれました。

リヨン独特の朝ごはん文化「マション」

マションとは?

では本題に入りましょう。リヨンはかつて絹織物産業が盛んで、多くのカニュ(canu)と呼ばれる絹織物工が昼夜問わず働いていました。マションとは、元々はカニュたちが夜勤明けに大衆食堂ブションで食べる朝ごはんのことでした。長い夜勤で疲れた体を癒すための食事だけあって、ボリュームも内容もガッツリ。食事のお供には、ボジョレーなどの地元のワイン。カニュたちが集まった食卓は、雰囲気も和気あいあいとしていたそうです。

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マションで食べるもの

気になるマションのメニューはと言えば、シャルキュトリーや豚や仔牛のモツなどを使ったリヨン名物料理。ベジタリアンとは真逆の内容ですね。代表的なものを少しご紹介しておきたいと思います。いずれも、マション特有の料理ではなく、リヨンのブションで普段から食べられるものです。

グラトン(graton)

豚肉などの使わない部位の脂身を、少量の油で何時間もかけて煮込んだもので、アペリティフとして出されることが多いおつまみ感覚の料理です。見た目は唐揚げのようですが、食感や味わいは少し違います。脂身の旨味たっぷりで、ついついたくさん食べてしまいますが、ほぼ脂なので食べすぎには注意してくださいね。

ちなみに、リヨンでは鴨の脂身で作られたグラトンをフリトン(friton)と呼ぶこともあります。私は個人的に、豚のグラトンよりも鴨のフリトンの方が好みです。

アンドゥイエット・リヨネーズ(andouillette lyonnaise)

リヨンの郷土料理の1つで、見た目はソーセージに似ていますが、中身は一般的なソーセージと異なり、仔牛の腸間膜(fraise de veau)あるいは豚のモツが詰められています。きちんと処理されているのですが、独特の香りがはっきりと残っているので、リヨンっ子でも好き嫌いが分かれる一品です。

アンドゥイエットはシャンパーニュ地方のトロワが発祥ですが、時と共にフランス各地へ広がり、現在では5つの街で郷土料理となっています。地方により少しずつレシピや料理方法が違うので、この独特の香りが好きな方はいろいろ試してみるのもおすすめです。

ちなみに、私が初めて食べたのはトロワのアンドゥイエット。個人的に香りが苦手で、実はそれ以来食べていません。

タブリエ・ドゥ・サプール(tablier de sapeur)

牛のミノまたはハチノスをマコネの白ワインとマスタード、レモン果汁で数時間マリネし、パン粉をからめて揚げたもので、人気のリヨン郷土料理のひとつです。tablier de sapeurとはフランス語で「工兵の前掛け」のことで、その由来は、この料理の見た目がナポレオン3世時代に工兵が身につけていた皮の前掛けに似ていることから来ているそうです。

セルヴェル・ドゥ・カニュ(cervelle de canut)

フェッセルというフロマージュブランを水切りしたものに、ニンニクとエシャロット、シブレットなどのフレッシュハーブを混ぜ、オリーブオイルと塩コショウで味付けしたものです。リヨンのブションでは、デザートとして食べられています。ちなみに、cervelle de canutは日本語に訳すと「絹織物工の脳みそ」という意味です。

ブション
写真はイメージです。

リヨンの大衆食堂ブションでマション体験

マションウィーク

今年2022年の10月10日から16日の1週間、リヨンでマションウィーク(Mâchon Week)というイベントが開催されました。リヨンから最も近いワイン産地コトー・デュ・リヨネ(Coteaux du Lyonnais)の生産者団体と、リヨンのブションやレストランがコラボし、1週間に渡ってマションはもちろんのこと、アペロやディナー、ブランチ、テイスティングなど多くの催しが行われました。

Mâchon Week 公式ウェブサイト

リヨンで人気のブションLa Meunièreのマション

私もこのマションウィークを楽しもうと、リヨンの人気ブションの1つ、プレスキルにあるLa Meunièreでマションを体験してきました。以前から気になってはいたものの、実際に食べに行ったのは初めて。集合時間は朝9時。朝からリヨン名物のガッツリした料理を、Coteaux du Lyonnaisの赤ワインを片手に食べるというのも貴重な経験でしたが、和気あいあいとした雰囲気の中、初めて会う人たちと同じテーブルで食事をしながら楽しい時間を過ごすことができました。

ちなみにこの日のメニューは次の通り。写真付きでご紹介します。

■ 前菜:パテ、豚のミュゾー(鼻)のサラダ、仔牛の足のサラダ、レンズ豆のサラダ

マション

■ メイン:豚のアレニエのワイン蒸し(araignée de cochon braisée au vin)

マション

■ デザート:セルヴェル・ドゥ・カニュ

セルヴェルドゥカニュ

■ ワイン:Domaine Clos Saint-Marcのコトー・ドュ・リヨネ赤

La meunièreでは、通常時も事前予約制でマションを楽しむことができるそうです。リヨン在住の方でまだマションをしたことがない方も、リヨンへ旅行でお越しの方も、ぜひ一度体験してみることをおすすめします。気をつけたいのは、マションへ行く前には朝食は摂らないこと。ただしメニューは決して消化の良い内容ではないので、少しだけフルーツなどを食べておいた方が良いかもしれません。私は試していませんが、マション前にはコーヒーを飲んでおくという人もいました。

La Meunière
住所:11 rue Neuve 69002 Lyon
ウェブサイト https://www.lameuniere.fr/
マションは火〜土曜日の朝9時開始(完全予約制)

Domaine Clos Saint-Marc
住所:60 route des Fontaines 69440 Taluyers
ウェブサイト http://www.clos-st-marc.com/

La Meunière

リヨンでマションを体験できるレストラン

リヨンには、La Meunière以外にもマションを楽しめるブションがあります。私が確認できた2軒をご紹介しておきます。ONLYLYON観光局のウェブサイトにもリストがあるので、あわせて参考にしてください。なお、マションは予約制がほとんどです。事前に必ず連絡をして確認してくださいね。

Café du Peintre
住所:50 boulevard des Brotteaux 69006 Lyon
ウェブサイト http://lecafedupeintre.com

Daniel & Denise
住所:156 rue de Créqui 69003 Lyon(旧市街、クロワルッスにも店舗あり)
ウェブサイト https://danieletdenise.fr/venez-machonner-chez-daniel-denise/

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